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2015/07/09

わもんな言葉127-響き

内田樹さんの講演録である「最終講義」(『最終講義 生き延びるための七講』所収、文春文庫)の中で、声の響きについて言及されていた箇所がありました。

アイデアの尻尾をつかまえたときに、それをたどっていけるかどうかは知的なイノベーションにおいて死活的に重要なことですが、それにはその場が声の響きがよいかどうかが深くかかわっています。

内田さんが勤められていた神戸女学院大学の建物でもあるヴォーリズの建築の特徴として「声の通りが良い」ということを挙げ、「声が気持ちよく響くという音声環境は学校教育にとっては大切な条件」である、と言っています。

「音声の悪い教室とよい教室ではそこで営まれる知的営みの質に決定的な差が出てくる」、つまり、声が気持ちよく響く音声環境では、アイデアの尻尾をつかまえたときに、それをたどっていきやすいということです。
何か思いついて、それを口にすると、その言葉につられるように次々とあとの言葉が紡がれてくる。センテンスを言い終わる前に、次のセンテンスがうまく繋がる。それは自分の発している言葉の持つ音楽性というか、物質性というか、そういうかすかな手がかりがとらえられるからできることなんです。
ここでは、学ぶ個人と、学ぶ環境ということで語られていますが、「話し手」と「聞き手」としてとらえなおすこともできるのではないかと思います。


聞き手は、話し手の話す場、環境をつくります。

話し手が何でも話せるような安心空間をつくることもできます。

逆に、聞き手次第で、話しにくい雰囲気がつくられてしまうこともあります。

聞き手は、話し手にとっての環境となりえます。


話し手が話すときの音声環境によって、そこで営まれる知的営みの質に決定的な差がでてくるならば、環境としての聞き手の役割は重要になります。

話し手の声がいかに気持ちよく響くような環境をつくることができるか。

聞き手がつくる環境が、話し手の知的な営みに影響します。

話し手の気づきや知的イノベーションを促すことができます。


そのためにも、まずは自分自身の響きに意識を向けるといいかもしれません。

どんなときに声が気持ちよく響くのか。

どんなところで不快な響きが出てくるのか。

そうすることで、周りの響きにも意識が向くと思います。


響きを感じるところからはじめませんか?


最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)
最終講義 生き延びるための七講 (文春文庫)

聞けば叶う〜わもん入門
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